至 仏 山

2,228m  群馬県
2011年7月の登山は ココ

2004年7月20日(火)  雨時々曇り
【メンバー】 単独

(3:40)戸倉(4:20)…(4:50)鳩待峠(5:45) →(7:14)オヤマ沢田代 →(7:53)小至仏山 →(8:38)至仏山(8:55)→(10:55)山の鼻(11:05) →(12:00)鳩待峠

【歩行時間 5時間48分】

尾瀬ヶ原からの至仏山


瑞牆山以来約1ヶ月半ぶりの登山で、始めての夜行日帰りで至仏山へ出かけました。いつものとおり私の単独山行です。7月19日(月)新宿発22時30分の美ヶ原観光バスに乗車して、一路「尾瀬戸倉」へ向かいます。どこででも寝られると自負していた私ですが、いささか年を重ねてきたせいか寝付けません。明日のことを思うと寝ておかなければと思いますが、なかなか…。
「尾瀬戸倉」に3時40分に到着。ここからシャトルバスに乗り換えて「鳩待峠」へ向かうのですが、4時20分発とのことで少し待ち時間があります。

バスの中で待つうち次第に明るくなってきたのでバスから降りてみます。
空には、暗雲が垂れ込み、あまり良い天気ではなさそうですが、きのうネットで見た予報では午後から晴れるということなので、心配無いと楽観視していました。シャトルバスは定刻通りに鳩待峠へ向けて出発しました。途中、車窓から山の木々が大きく揺れるのが見え、場所によって「風の通り道があるんだなぁ」などと思いながら、到着時刻を気にしているうちに、25分ほどで鳩待峠に到着しました。

初めて降り立った地で感慨にふけっていると、バスから降りた人たちは一斉に小走りに休憩所の方に向かって行きます。なぜかは後で分かったのですが、朝の食事をするテーブルの数が少なく、椅子取りゲームだったのです。風は強く、時折集中豪雨のような雨が落ちてきます。自分も準備をしなければと、雨具を着たり、ザックカバーを付けたりしていましたが、他の人たちは全然動く気配がありません。
この風雨だから躊躇しているようです。

席が空くのは期待できないので、立ったままツアーに頼んでおいた「まいたけおにぎり」をほうばります。なんだか食べた気がしませんでした。相変わらず風雨は強く、登山は止めようかとも思うし、予報通り快方に向かうかもしれないと思いながら、他の人の動きを観察していると、山ノ鼻に向かう人は出発しますが、至仏山へは誰一人として向かう人は居ません。 今日は、断念しようかと思案していると、1組また1組と至仏山登山口に向かっていくではありませんか。よし私も、と直ぐに出発したかったのですが、朝の大事なお勤めが終わっていませんので、慌てて済ませ5:45鳩待峠を出発しました。

灌木の林の中を歩き始めて1Km地点の道標を過ぎ、さらに15分くらい進むと、左側(南方)が開けてうっすらと山が見えますが、何という山かは分かりません。この辺りから植物保護のためと思われる木道を歩くようになります。

木道の脇にはヤマユリのような花が咲いています。花の名前は全くわかりませんが、カメラに収めておきます。景色が見えない分こんなことをしながら気を紛らわします。

歩き始めて1時間半くらいでオヤマ沢田代(標高1,890m)に着きます。ここで少し休息します。小川が流れているような場所を想像していたのですが、水量も少なく指導標が無いとそこであることが分からないような小さな沢です。

オヤマ沢田代と思われる湿原を過ぎると笠ケ岳への分岐を左に分けます。鳩待峠から1時間40分。ややペースが遅いかもしれません。夜行バスで眠れなかったから仕方がないと自分に言い聞かせます。確かに足が重いです。

小至仏山への登りで、年配の男性単独行者とすれ違いました。高山植物を撮影にきたとのことで、小至仏山へ向かう稜線まで出てみたがあまりの突風に断念して戻ってきたそうです。今年は花が早く咲き、2週間くらい前でないといけなかったそうで、「また、来年だな。」と寂しそうに呟いていました。「お気をつけて!」と互いにエールを交わし、私は行ける所まで登ってみることにします。

この後で、凄まじい体験をすることになりました。「私はどうしてこんなところに居なければならないんだ」年配の男性の言うとおり、小至仏山に向かう稜線は下からの突風と横殴りの豪雨。佐古さんの本で読んだ富士山の突風のことが頭を過ぎります。雨具を通して当たる雨に顔が痛く、メガネも曇って前が見えません。こんなことだったら、どこかの温泉にでも浸かってゆっくりしていれば良かった。後悔しながら、戻るに戻れず我慢して登り続けます。

強風に何度もよろけながら、やっとの思いで至仏山山頂にたどり着きました。山頂は小広く、どうしてか風も穏やかでした。あの突風は、何だったのだろう。山頂には10人くらいのパーティが居て、何事もないように下山準備をしています。

立ったままパンをかじり水分を補給します。しばらく、時間を空けて下山することにします。実はこの人たちと一緒になって自分の登山技術の未熟さを見られたくなかったからです。

 


山ノ鼻に向かって下山を開始します。所により例の突風が襲ってきます。足を踏ん張って立ち止まります。下山道の多くが木製階段、それ以外は、蛇紋岩のガレの連続です。
スリップに注意しよう。慎重に足を下ろします。スリップしないと確信して次の足を下ろす。こんな繰り返しです。
滑るのは雨の日だけではなさそうで、「スリップ注意」の立て札があちらこちらにあります。

一瞬、尾瀬ヶ原が見える。神様からのプレゼント


途中、木製階段で2回、石の階段で1回尻餅をつきました。あんなに注意していたのに完全に疲れが足にきていました。この登山道は、植生が破壊されて一時通行禁止の措置がとられたそうです。その後整備されて歩きやすくなったと聞いていましたが、雨のときは、小川になってまるで徒渉しているようです。(大げさです)

山ノ鼻へ向かう。燧ケ岳が正面に見える

途中で追い越した他の下山者もこの道のスリップに手を焼いていたようでした。それでもガイドブックにあった標準時間(2時間)で下ることができました。しかし、雨具を通して水が浸入して上半身濡れネズミで、ゴアテックスを過信したことを反省します。購入以来、一度も手入れをしていませんでした。山ノ鼻で体勢を整え直し、緩やかな登りを鳩待峠へ向かいます。鳩待峠には12時に到着しました。
暴風雨という貴重な体験をした6時間15分の本当に疲れた山旅でした。