久 住 山
1,787m 大分県
牧ノ戸峠(5:45)→(5:58)東屋(6:05)→(6:12)沓掛山三角点 →(6:50)食事休憩(7:00)→(7:08)星生山分岐 →(7:28)久住分かれ →(8:00)久住山(8:10)→(8:30)久住分かれ →(8:50)西千里が浜の横 →(9:50)牧ノ戸峠
【歩行時間 3時間38分】
妻と私は宿泊先の九重観光ホテルを5時過ぎに出て、レンタカーで牧ノ戸峠の駐車場へ向かいます。天を仰ぐと満天の星空で今日も天気は良さそうです。気温が下がっていて寒さ対策のためTシャツの上に長袖のシャツを着ます。
外は真っ暗闇で、車のヘッドライトの先だけ視界が利きます。タヌキかアライグマか分かりませんが、前方の道路を横切りました。普段よりもゆっくり慎重に運転します。7分ほどで牧ノ戸峠の駐車場に着きました。
駐車場には既に3台ほど駐車している自家用車がありましたが人の気配はありません。トイレへ行こうとしましたが、余りにも真っ暗なのでもう一度ホテルへ引き返すことにします。再び牧ノ戸峠駐車場に着くころには、ぼんやりと人影が見えるくらいに夜が明けてきました。ヘッドランプを着けて登山靴に履き替えて登山口を探しますが見当たりません。昨日のうちに調べておけばよかったのですが失敗しました。妻の勘が冴えて登山口を見つけることができ、5時45分に登山開始となりました。
登り始めは舗装路が沓掛山まで続きます。登り始めて直ぐに妻が昨日靴擦れした踵に違和感があるというので、東屋のベンチに腰掛けてテープを貼るように薦めます。更に真っすぐに延びる舗装路を登り左へ折れて木製階段を登ると沓掛山の三角点に着きます。この周辺は紅葉が始まっていて対面する山(扇ガ鼻)の斜面の赤、黄色、緑の配色がとても綺麗です。三角点から沓掛山頂まで平らな稜線の紅葉の中を行き、少し高くなった岩場が山頂です。
沓掛山三角点
三角点から沓掛山頂までの道
太陽に照らされていない紅葉の自然な色合いが綺麗に見える前方のピークに一人の男性が久住山方面を向いて佇んでいます。今日、見かけた初めての人です。短い梯子が架かる岩場を下り広い稜線を進みます。右側が浅い谷になっていて、ここの鮮やかに色付いたモミジを写そうとカメラのシャッターを押しますが切れません。ん?と思いカメラの表示パネルを見ると何とバッテリー切れではありませんか。何ということでしょう。予備電池を車に置いてきたカメラケースに入れたままだったのです。大失敗です。
シュンとしている私に妻が気付き慰められてしまいました。クヨクヨしていても解決できないので携帯電話のカメラで写すことにします。これで山頂での記念写真もダメかなどといつまでも暗い気持ちで穏やかな坂道を登って行きます。小腹が空いたと妻が言うので、岩が点在する小広くなった登山道の平らな場所で朝食にします。朝食といってもウインナパンとアンパンしか持って来ていないのでとても質素な食事となりました。
アンパンをかじりながら周囲を見渡すと、岩の山や扇を広げたような丸い山などが、自分が一番高いといわんばかりに高さを競っているように見えます。
◆カメラのバッテリーが突然切れた場所
どの山もドングリの背比べで、際立って高い山はありません。
深田久弥さんがこの山域を九重共和国と言ったのが頷けます。明るさは増してきましたがジッとしていると体が冷えてくるので歩き始めることにします。ザックに残りの食料を入れて整理するためにカメラを持ち、何の気なしにスイッチを入れてみるとバッテリー残量が半分ある表示が出ました。小躍りで喜び直ぐにスイッチを切って山頂の記念写真用に大切にしまっておくことにします。
扇ガ鼻への道を右に分け、水の無くなった川原のような石ゴロの道を行くと左に西千里が浜の窪地が見えてきます。対面する斜面は紅葉が真っ盛りです。更に進むと星生山の分岐となり右前方に目的地の久住山が見えてきます。うっすらと凍結している土の道を足早に歩きます。この程度の道ならKさんを連れてくれば良かったと後悔します。
星生山の前衛岩峰と西千里が浜
左側に聳える岩峰の星生山の基部は岩場ですが、あまり高低差が無いので快調に進めます。岩場が終わってザレ場を下りきると久住分かれに着きます。ここは平坦地になっていて非難小屋とトイレが設置されています。久住山が目の前に鎮座しています。ここから久住山までは約30分の登りです。少し進むと硫黄山辺りの稜線の向こう側から水蒸気がもくもくと昇っています。安達太良山の沼ノ平と同じように白や黄色に変色した山肌は、火山活動レベルが発表されている山であることを実感させられます。
突然、妻の携帯電話が鳴りました。九州に同行してきたShoさんからの帰り時刻の問合せのようです。久住山へ向けて岩交じりのザレの道を登り始めます。今までの道よりは勾配が急で山登りらしくなりました。登り始めて直ぐに右方向に山頂に向かって延びる踏み跡があるのに気付いて妻が「行ってみようか」と言い出しましたが、安全を考えて正規ルートを登ることにします。左に中岳への道を分けザレ気味のやや急な道を登ります。
山頂直下は岩が大きくなりステップがきいて歩きやすくなります。ガイドブックの案内通り、久住分かれから30分で久住山頂に着きました。山頂には岩に支えられた山名標柱と木板の看板があります。山頂からは360度が見渡せるのですが、昨日に引き続き霞がかかっていて遠方まで見えないのが残念です。星生山、硫黄山、三俣山、天狗ガ城、中岳や稲星岳など高さが余り変わらない九重の山々が話をしに集まってきているみたいな感じです。大した苦労も無くこのような絶景にお目にかかれる山が近くある地元の方が羨ましいです。
突然、空で轟音がしたかと思うと航空機が機体の模様が見えるほどの高さで北方から南方に向けて飛んでいきました。私達が羽田から乗った便と同じかもねと妻が言うので時計を見ると確かに8時を廻ったところでした。妻のこういう瞬時の判断力は優れたものがあります。最高峰の中岳へも行ってみたいのですが、ホテルで帰りを待つ九州ツアーメンバーが居るので、次回に違うルートを登りにこようと約束し、記念撮影を済ませて下山することにします。
天狗ガ城と中岳
下山は、例の短縮できそうな道を下ってみることにします。岩の間に踏み跡があり、何人もの方が歩かれているようです。登りのザレ場とは違って岩場の下りなので踏み外さないようにゆっくりと下ります。下りきってから時計を見ましたが、大して時間短縮になっていないので、やはり正規ルートを下る方が安全で効率的だったと後悔しました。
久住分かれの広場で今日、初めて登山者とすれ違いました。お互いに山ではお馴染みのご挨拶を交わします。「早いですね」「行ってらっしゃい」お互いのエールの交換です。こんな短い会話ですが、一人で登っている時は特に近くに仲間が居るのだという安心や連帯感を感じます。久住分れからのザレを登り返す辺りから、続々と登山者とすれ違うようになりました。平日だというのにご年配の方や若い方など老若男女を問わず登られている山のようです。
往路でうっすらと凍結していた道も解けています。周りの風景も朝の紫外線に照らされて色が変わって見えます。星生山から延びる尾根の突端の岩峰は、全体がゴリラの顔のようにも見えます。登りの時にバッテリー切れで写せなかった風景をカメラに収めます。しかし、太陽光線が邪魔をして朝のような写真は無理でした。ツアーメンバーが待つ「九重観光ホテル」の赤い屋根が遠くに見えます。
沓掛山の岩場を越え東屋を過ぎて牧ノ戸峠の駐車場に9時50分に着きました。何とかチェックアウトの10時までには皆の待つホテルに戻れそうです。午前中だけという制約のある山行でしたが、今度は季節を変えてゆっくりと周遊してみたい心に残る山になりました。
背の低いススキ
牧ノ戸峠の駐車場
沓掛山からの舗装路を下る
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