塔の岳~鍋割山

1,491m・1,272m  神奈川県

1998年11月21日(土)  曇り(薄日)
【メンバー】 単独

渋沢 =(バス)= 大倉(7:40)→(8:15)雑事場ノ平 →(8:32)一本松 →(8:51)駒止茶屋(8:58)→(9:18)堀山の家(9:25)→(9:45)茅場平 →(10:12)花立山荘(10:25)→(10:45)花立 →(11:12)塔ノ岳(12:05)→ 大丸 → 小丸 →(13:30)鍋割山(13:45)→ 後沢乗越 →(14:50)林道終点(14:55)→(15:10)二股 →(16:20)大倉

【歩行時間 7時間】

※この日に撮影した写真以外に2001年9月に撮影したものも含まれています。

いよいよ丹沢山塊の百名山の一角(塔の岳)にチャレンジです。
先月の三ノ塔の登りはかなりハードできつかったので、今日はユックリを忘れずに約3時間10分を登ります。3時間を超える登りは初体験で少し緊張します。
時間に余裕を持つために家を早めに出ることにします。天候は晴れていてコンディションは良いのですが少し暑いかもしれません。休む場所や所要時間などもガイドブックに沿って綿密に計画を立てましたがうまく行くでしょうか?

渋沢駅から大倉行きのバスに乗るのも始めてで乗り場を探します。駅前のデッキから今日登る塔の岳方面の山が見えます。バス乗り場の脇には登山届のボックスがありますが、誰も入れる様子がないので私も入れないで済ませます。

渋沢駅から大倉まではバスの所要時間20分ほどで到着します。大倉バス停周辺は秦野市が戸川地区に「表丹沢ふれあいの村基本構想」を計画し、平成9年から共用開始され、ガイドブックに載っている写真とは大きく様変わりしています。「風の吊り橋」の対岸に先月三ノ塔から降り立ったことを思い出します。

大倉バス停に降りたつ登山者は、皆さんが山慣れしている感じで、初心者の私は次の動作に移るまでがギクシャクしています。次々と準備を終えて出発していく人々を横目に基本通りのストレッチを入念に行い、少し遅れて舗装道路を北へ歩き始めます。
少し行くと右側に大きな駐車場がある「大倉山の家」の庭には大きな鯉が飼われています。

ガイドブックの写真通りの分岐

間もなく左側に写真で見たとおりの大倉尾根への分岐があります。簡易舗装の坂道を登るとこれもガイドブック通りに右に「克童陶房」の窯場があります。窯場を過ぎると雑木林を抜ける石敷きの道になります。でこぼこの石敷きの道はこの日からずっと私の嫌いな場所になります。杉の植林地の中を穏やかに登り、休業中の「観音茶屋」を過ぎると、「大倉高原山の家」への分岐があります。どちらのルートでも時間に大差は無いようですが、基本通りに右側の道を選びます。

観音茶屋

大倉高原山の家への分岐

丸太で土留めされた階段が所々、掘れてしまって崩壊しかかっています。花粉症の季節ではないのですが、花粉症を持つ私には杉の林は良い印象がなく、早く抜け出したい気持ちになります。登り始めてから40分ほどで、平らな尾根道の「雑事場ノ平(ぞうじばのたいら)」に出ます。左から大倉高原山の家を経由してきた道が合流します。何人かの登山者が休憩していましたが、ガイドブックの案内通り1時間に1回休む計画なのでこのまま進みます。

両側が杉の植林の平らな尾根道を進むと正面に見晴茶屋が見えてきます。見晴らしが良いからこの茶屋の名前が付いたのでしょうが、南東側が僅かに開けているだけで決して眺望が良いとは思えません。周りの樹木が成長してしまったのだと思います。茶屋の前を通過して広くてややガレの階段を登ります。登山道の両脇にはイロハカエデの若木が植えられていて、このコースを「丹沢大倉モミジの道づくり」としてもみじの道にしたいと推進している方々が居ると聞きました。この運動に参加している皆様のお陰で、綺麗な紅葉が見られるのだと思うと頭が下がる思いです。

丹沢大倉モミジの道づくり

一本松の先のベンチ

一本松の道標を通過し、私の嫌いな石敷きの道を少しでベンチのある平らに着きます。ここから先は急坂が連続するので予定通りここで小休止をします。ここまでは少しハイペースですがとても順調です。樹林に囲まれていて展望はききませんが、爽やかな涼風が熱くなった体に心地よいです。少し平らな道を行くと丸太で土留めした階段の登りになり呼吸が乱れます。山を歩き慣れない私にはきつい階段です。「駒止茶屋」に着く頃には息は上がるし足は攣るし散々でした。

駒止茶屋

ここで予定外の休息をとることにします。前半は快調に進んでいたのですが、ペース配分が悪くて早くもトラブル発生です。駒止茶屋はお休みのようで人の気配がありません。茶屋の前で地面にしゃがみ込んで攣った足にシップを貼り水分も十分に補給して出発します。茶屋のすぐ上にはベンチが置かれていてここで休めばよかったと悔しく思います。駒止茶屋からは緩やかな道となり、右手には三の塔、左手には鍋割山方面の山並みが見え、ここに大倉から4kmの道標があります。

樹間からの三の塔

大倉から4kmの標識

紅葉が始まった道を一旦少し下って登り返すと二俣への分岐点でもある「堀山の家」に着きます。
小屋の前にはベンチが置かれていて休んでいる人もいましたが、休んでばかりもいられないので先に進みます。 堀山の家からは石ゴロの階段になり少し視界が開けてきます。

堀山の家

ガレの登り

木で土留めされた階段が多い

きつい階段を登るとベンチもある茅場平という平坦地に着きます。ここは戸川へ下る天神尾根の分岐点にもなっていて、秦野市街が遠望できる開けたところです。当然、ここでもお休みです。ここから先に300段を越える階段が待ち受けているからです。
僅かに穏やかな登りに続き、丸太で土留した階段を登ります。大きく掘れてしまった元の道は新しく付け替えられ、その跡に植林をして山の保護に努めています。このように山の保護に努力されている方々のお陰で、私たちが山を楽しむことができるのだということを忘れてはいけないですね。

これから登る花立(右)が見える

何か動くものが視界に入りました。よく見ると鹿の子が3頭、前方を歩いています。写真、写真と急いでザックからカメラを取り出しましたが、走り去る瞬間しか撮影できませんでした。
(当時は未だ普通のカメラしか持っていなかったので、シャッターチャンスに瞬時に対応できないでいました。これがきっかけでポケットに入るデジカメを購入しました)

景色や自然を楽しむ余裕が無く、ひたすら登ることだけしかできない自分がとても情け無いです。
大きな岩を回り込んで先を見やると天まで続いているかと思えるような階段が延びています。気を取り直してユックリ登ります。何度か途中で立ち止まることはありましたが、何とかカキ氷の幟旗が立つ花立山荘にたどり着きました。

花立山荘

真鶴方面が見える

花立山荘は南面が開けていて、大山、表尾根、相模湾や箱根の山々などが一望に見渡せる眺望の良いところです。ここで暫く休むことにします。最大の難所を越えて一安心です。
この大倉尾根(俗称バカ尾根)はボッカ駅伝大会のコースになっているそうで、何リットルもの水を背負って走って登る人が居ると聞くととても信じられません。
休んでいる間にも走って登ってくる人達がいますがその訓練なのでしょうか?私には縁のないことですが…。

花立山荘からまったく日陰が無いザレの尾根道を登ります。夏は暑すぎて歩けないと思います。登りついた平坦地が花立で、蛭が岳や塔の岳などの丹沢の盟主や鍋割山稜、富士山なども望めます。花立の頂は植生保護のための木道を進みます。少し下って痩せ尾根を渡り登り返すと金冷シです。

金冷シは分岐になっていて鍋割山への道を左に分けて右へ進みます。
ここからも木止めの階段ですが、今までよりも段差が小さいので少し楽に登れます。かなり疲労が足にきていて軽やかとはいきませんが最後の3段重ねの土留めの丸太を跨いで越え念願の塔の岳山頂に着きました。

山頂は広く尊仏山荘と廃屋となった日の出山荘が建ち、太くて堂々とした山名表示の標柱が立っています。山名方位盤もありましたが、たくさんの人が寄っていたことと、なによりも早く座りたかったので遠慮します。
山頂からは、遠くに箱根や伊豆の山々、愛鷹山、富士山の右には南アルプスの山並み、近くは西丹沢の山々、大山や表尾根の山々が一望できます。三の塔より格段に眺望が優れています。苦労して登ってきた甲斐がありました。

山頂でくつろぐ登山者達。快晴で雲一つありません

三脚を立てて記念撮影を済ませ、昼食をとるために土留めの角材をベンチ代わりして腰掛けます。これでもう登らなくても良いと思うと気持ちが楽になります。
塔の岳で大休止の後、鍋割山へ向けて出発します。疲れているのだから往路を戻ればよいのに何故でしょうね?
金冷シまでは登りのときとは大違いで往路の階段を快調に下ります。金冷シを右折して鍋割山稜へ入り更に下ります。

大丸へは、所々土留めの丸太がある登りになります。予想以上に急な登りで大丸へ登りきったときは休まずにはいられませんでした。
大丸からは稜線漫歩が続きます。南側の樹間から今朝登ってきた大倉尾根が見えます。結構な距離を歩いてきたものだと自分ながら感心しました。
鍋割山稜はブナの木が多く残り、紅葉のシーズンや冬季に歩くのがベストかもしれません。ブナ林の中を何度かアップダウンを繰返すと正面に鍋割山が見えてきます。その遥か向こうに霞んだ富士山が見えます。

手前が登ってきた大倉尾根、奥に三ノ塔と大山です

最後の緩やかな登りで鍋割山頂へ着きました。山頂は植生保護のためにロープがあちらこちらに張られていて、踏み荒らされるのを防止しています。富士山方面の西側と南側の眺望がよい山頂です。NHKの番組で有名になった草野延孝さんが経営する鍋割山荘に入ってみましたが、草野さんは不在でした。記念撮影だけ済ませて後沢乗越へ向け下山します。登山道にはコンクリートブロックの土留めがたくさん置かれていて、これも草野さんが整備したものだと思います。山荘の経営も傍で見るほど楽ではないのだと感じます。後沢乗越までの道は予想以上に急坂でザレの箇所も多く、きちんと足を下ろさないとズズーと滑ります。

鍋割山が近づいてきました

30分ほどで後沢乗越に着き、そこを左折して涸れた沢を渡り杉の枯れ葉の絨毯を歩きます。水の音が聞こえてくると水場のミズヒ沢に着きます。岩の間から流れ落ちる水は冷たくて美味しいです。ミズヒ沢を丸太の橋で渡ると直ぐに本沢の橋が架かっています。ここはミズヒ沢と本沢が合流して四十八瀬川になるところです。本沢を渡りきったところにペットボトルの空き容器がたくさん置いてありました。近くに水場が無い鍋割山に登る方に水を運んでもらうために用意したものだと直ぐに気付きました。ここからは右側の四十八瀬川に沿って大倉まで約1時間30分砂利道の林道歩きとなります。既に紅葉が始まっていて、山の斜面を眺めながらの林道歩きとなります。

西山林道を歩いて紅葉を見に来るだけでも価値がありそうです。
林道終点から15分ほどで四十八瀬川と勘七沢が合流する二俣に着き勘七沢を渡渉します。二俣までは車で入れることは知っていましたが、想像以上に広い駐車スペースでした。
林道を歩くこと1時間10分ほどで右に丹沢大山国定公園の看板があり、その先をUターンするように左折して檜の植林地に入り道なりに進みます。途中で激しい匂いの畜舎を過ぎ、民家の間を抜けて大倉のバス停に戻りました。

大山からの塔ノ岳(2005年2月)