丹 沢 山
1,567m 神奈川県
渋沢 =(バス)= 大倉(7:45)→(10:20)花立(10:40)→(11:10)塔ノ岳(11:25)→(11:52)日高 →(12:14)竜ケ馬場 →(12:34)丹沢山(13:00)→(13:31)太礼ノ頭 →(13:58)円山木ノ頭 →(14:30)本間ノ頭 →(15:48)青宇治橋分岐 →(16:42)青宇治橋 →(17:07)唐沢キャンプ場 =(車)= JR相模原駅
【歩行時間 8時間21分】
いつものように塔ノ岳へ登ったのですが、今日は体調がとても良いので、少し足を伸ばしてみようと思い立ち、予定外ですが丹沢山へ行ってみることにしました。塔ノ岳までは何度も来ていても、お隣の丹沢山へは一度も行ったことが無かったからです。単独登山は、臨機応変に変更できるという良い反面、無計画な行動になっても制御する人がいないという悪い面もあるのです。
山登りを始めた頃に買ったガイドブックに、塔ノ岳を越えてからが本当の丹沢の良さがあるという記事を読んで、是非、泊まりで塔ノ岳~丹沢山~蛭が岳を縦走しようと心に決めていたため、今まで登らないでいました。
塔ノ岳と丹沢山は往復2時間くらいだから時間的には十分なので、途中で引き返しても良いことにして塔ノ岳の尊仏山荘の左側にある急坂を下りはじめました。途端に目に飛び込んできたのがゴヨウツツジ(別名シロヤシオ)の白い花でした。この景色は見たことがなかったので、夢中になって写真を撮りました。後方から「咲き始めましたか」と声を掛けられ振り返ると大きな荷を背負った山男が立っています。綺麗ですね~と言うとニッコリと会釈をして急坂を下っていきました。ボッカさんかもしれません。こういう風景は、素人の私には写真で表現するのは難しいので、是非自分の足で登って実物をご覧ください。
私は花よりダンゴを地で行く生活を永く続けて来ましたが、最近になって少しづつ、木や草花を見るのが好きになってきました。年のせいでしょうね。母が生前、猫の額ほどの庭に草花をはちきれんばかりに植えていたことを思い出します。
ゴヨウツツジは、敬宮愛子内親王のお印の花でその名のとおり真っ白のツツジといったところです。登山道のあちらこちらに咲いていますので、じっくり観察することができます。 緑の葉と白とのマッチングが何とも綺麗な色です。
あまりユックリしていると、丹沢山に到達できないので、そろそろ出発することにします。
ゴヨウツツジ(シロヤシオ)
日高までは、明るい尾根道を景色を眺めながら歩いているうちに着いてしまいます。竜ケ馬場へ向かう道からは、檜洞丸などの西丹沢の山々が連なり丹沢山塊の奥深さが感じられます。よく整備された木製の階段を登ると竜ケ馬場に着きます。竜ケ馬場にはベンチが置かれていて、休憩するのに良さそうです。南東側には大山がはっきりと望めます。
塔ノ岳から丹沢山までは、穏やかな明るい稜線のアップダウンを行く快適な道です。登山者も少なく丹沢山に着くまで二人組みの方とすれ違っただけでした。自然をのんびりと満喫できます。本当に足を伸ばしてよかったと思いました。
竜ケ馬場への稜線
竜ケ馬場
丹沢山頂は、ガイドブックの解説のイメージとは違い、西側が開けていて天候によっては富士山も見えそうな広々とした明るい山頂です。南側には、新しくて綺麗なみやま山荘が建っています。山バッジを買いにみやま山荘に入ると、塔ノ岳直下でお会いしたボッカさんと再会しました。やはり荷物を届けに登ってきたようでした。山荘のご婦人がお客様に接するような話し方をされていたのでボッカを仕事にしている方ではなさそうでした。
山頂にはテーブルとベンチがあり、単独の男性と2人組のご婦人が休憩していました。少しすると男性が塔ノ岳方面へ歩いていくのを見て、やはり塔ノ岳へ戻る人が多いんだなと思いましたが、札掛方面に下るルートがあったことを思い出し、そのルートを検討してみます。
丹沢山頂
みやま山荘
山頂にある少しかすれた掲示板を頼りに、下山ルートを考えます。いつもは持っている地図を今日に限って持ってきていません。掲示板では、位置関係がよく分かりませんが、宮ケ瀬まで出ればバスもあるし、何とか帰れるだろうと安易に考え宮ケ瀬までの11kmを歩いてみることにしました。
出発する準備をしていると、ご婦人二人組が先に宮ケ瀬方面へ向かって出発しました。同じ方向へ行くなら、後をなぞっていけば心強いと思い、急いで支度をします。後を追って出発しましたが、先行の二人組は全く見えません。帰宅してから分かったことですが、おそらく丹沢山直下200mくらいのところの塩水橋への分岐を右折していったのだと思います。
ブナなどの樹林帯の中の尾根道
ピンク色の花はトウゴクミツバツツジ
太礼ノ頭
樹林帯の中を尾根伝いに下ると鞍部に出て登り返して瀬戸沢の頭に着きます。疲労が蓄積してきたため、登りが少しきつくなってきました。この先、未だピークを四つ超えなければならないと思うと、引き返そうかとも思いますが、どっちにしても登りは避けられないので、このまま前進することにします。
ここの尾根道にある3つのピーク(太礼ノ頭・円山木ノ頭・本間ノ頭)を丹沢三峰と呼んでいますが、他に2つのピーク(瀬戸沢ノ頭・無名のピーク)があるので、本当は丹沢五峰が正解です。瀬戸沢ノ頭から少し下ってまた太礼ノ頭へ登ります。
ブナ林の新緑
太礼ノ頭から先は、ブナの新緑の中を気持ちよく下ります。気持ちよく下っていたのも束の間、目の前に急坂の登りが立ちはだかります。円山木ノ頭への急登を息も絶え絶えに登りました。計画性の無い登山者に罰が与えられているような気がします。ピークごとに小休止を繰り返すようになりました。疲れているのを実感します。でも宮ケ瀬までは未だ8.5kmも残っていて、時間的にも余裕がないのでゆっくり休憩もできません。現在2時。3時間後には樹林帯の中では真っ暗になってしまうので、休憩もそこそこに出発します。
円山木ノ頭
無名のピークの道標にはペンで「無名ノ頭」と書き込まれていました。無名のピークは無名ではなく「無名ノ頭」という名前が付けられているのだと思います。本間ノ頭からは急な下り坂が続き、スピードが上がります。所々に登山道が崩れていたり、左側が沢に向かって落ちているザレの巻道があったりしますが慎重に進めば危険はありません。小さな岩場を越えたところに「金冷シ」の道標がありましたが、大倉尾根の「金冷シ」と同じなので、この地名の意味を調べてみたいと思います。
右に青宇治橋への分岐の標識が見えたとき既に4時近くになっていたので、このまま尾根道を宮ケ瀬まで行くか、エスケープしようか迷った挙句、青宇治橋へ下る方が早いと判断して右折することにしました。これが大間違いでした。後に地図で調べたところ、分岐から青宇治橋まで1時間、更にそこから宮ケ瀬まで1時間20分で合計2時間20分、一方、尾根道をそのまま進めば宮ケ瀬まで1時間15分で、エスケープどころか遠回りしただけのことでした。地図を持たずに山へ行ってはいけません。
青宇治橋へは植林地の中の道で、あまり歩く人がいないとみえて踏跡も細く心細くなります。何だか逆方向へ向かっているような感じです。(正に逆方向へ向かっているのです)歩けどもちっとも青宇治橋なる橋にたどり着きません。1時間近く過ぎて、少し嫌気がさしてきたとき前方が開け川の音が聞こえてきました。やっと終点が近づいてきたようです。ところが、この先には道らしい道がありません。急傾斜の斜面を木につかまりながらやっとの思いで橋の袂に降り立ちました。
着いた!ホッとしたのも束の間、こんどはどうやって宮ケ瀬まで行くかが分かりません。少し先で林道の整備工事をしている方に伺うと、宮ケ瀬まで5kmくらいはあると聞かされ愕然としました。気を取り直して秦野清川線を歩きます。水の残りも少なく、喉の乾きに耐えながらひたすら歩きます。前方にキャンプ場の自動販売機が目に入ったときには、思わず駆け寄りお釣りを取るのも放ってペットボトルをゴクゴクと一気に飲み干しました。喉が潤されて元気が出てきたので、渇を入れて再び歩き始めます。何台かの自家用車が脇を通り過ぎていきます。舗装道路を歩いていると、車の有難さが分かります。今日は良く歩いたな~などと回想しながら歩いていると車が横に止まり、「乗っていきますか?」と声をかけられました。
みやま山荘で買った丹沢山のバッヂです
地獄に仏とはこのことです。かなり足にも疲労がきていたので、この女性二人組の山女さんの好意に甘えることにします。このお二人は相模原市にお住まいの方で、今日は塩水橋から蛭が岳を往復してこられたとのことでした。ご自身も登山の帰り道には良く乗せてもらっていると話されていました。山やさんには山やさんの気持ちが分かるんですね。
結局、車中で山の話に花が咲いたこともあり、JR相模原駅まで乗せていただきました。本当に助かりました。感謝!感謝です。今回の山行では、慣れている山塊だからといっておぼろげな記憶で山道を歩いてはいけないということを嫌と言うほど思い知らされました。