御 嶽 山
3,067m 長野県
七合目田ノ原(6:15)→(6:35)第1の祠(6:40)→(6:55)あかっぱげ(7:00)→(7:13)八合目金剛童子(7:20)→(7:30)八合目石室 →(8:02)一口水(8:10)→(8:22)九合目石室 →(8:41)御嶽神社頂上奥本社宮(9:06)→(9:33)剣ケ峰(9:45)→ 王滝頂上 →(12:19)七合目田ノ原
【歩行時間 6時間4分】
産経新聞社の夜行日帰りツアーで妻とともに木曽の御嶽山に登りました。
御嶽山の御嶽信仰は今でも盛んでその歴史は古く、『大宝2年(702年)、役の小角の開山に始まるといわれ、その後、第四十九代光仁天皇の宝亀5年(774年)に、ときの国司信濃守石川朝臣望足が、当時国内に流行した疫病の平癒と退散を祈願するため、黒澤口より登山して神殿を創建した』とされているそうです。
御嶽山では、登拝者が優先される山だということを念頭に置いて登らなければならないと何かの本で読んだような記憶があります。
横浜発23時の夜行バスで山麓の田ノ原まで登りそこから山頂を往復するコースです。妻は以前、千畳敷(標高2,612m)に行った時ロープウェーで一気に登って気分が悪くなった経験があるので、3,000mを超える山だからと高山病を心配しています。でも何時もながら、夜行のバスでは寝られませんね~。(^^;)
田ノ原駐車場に到着して重い足取りで出発の準備をします。気のせいか空気が薄いような感じがします。
今日の添乗員さんは女性ですが、正に山女のようでとても頼もしく見えます。また現地ガイドさんは、地元スポーツ用品店のご主人で、山岳会に入っているため順番でガイドとして狩り出されるのだそうです。
総勢38名で形式的に準備体操を終え、ガイドさんの先導で4班に分かれて6時20分に田ノ原の鳥居をくぐって出発です。
上空は雲と霧が立ち込め、山頂を望むことはできません。山の中腹に登る人の姿が見えます。でも少し風が出てきているので、ひょっとすると晴れるかもしれないと期待しながら、ハイ松の林の中の自動車が走れるほどの平らな砂利道を山に向かって進みます。
さすがに信仰の山だけあって、そこここに社殿が建っています。20分ほどで第1の祠で立ち休みします。
ここからは、灌木帯の中の少しぬかるんだ木で土留めした階段になりますが、それも長くは続かず火山礫の坂道に変わります。
少し開けたところが「あかっぱげ」と呼ばれている所で、確かに樹木が生えていないし地表が火山礫で赤みがあるからだと素直に納得しました。
ここから少しずつ登山道にゴツゴツした小さな岩が混ざってきます。この岩が適度な間隔で階段のように積まれていてとても登りやすい道です。信者の中には裸足で登る方も居てその方達のためにも歩きやすく整備されているのだと思います。
八合目金剛童子で小休止します。ここにも祠や石像が建立されていて宗教色が出ています。振り返ると三笠山と田ノ原の駐車場が見え、少しずつ霧が晴れてきています。この様子だと数時間後には晴れるような気がします。
ここの登山道にはガイドさんが言っていたとおり植物を余り見掛けません。ハイマツの間に見つけた黄花石楠花やイワオトギリ、イワカガミが咲いていた程度でした。季節外れだったのでしょうか?次はこの先の「一口水」の小休止まで頑張ることになります。
先頭のガイドさんの直後を歩く妻が無理にペースを合わせているように見えます。少し急になった岩場を黙々と山頂目指して登ります。左側に雪渓が見え、少しの登りで「一口水」に着きます。
ここで小休止です。今日のガイドさんは、少し歩いて少し休むというペースで先導します。無理の無い歩きで助かるのですが、ペースに乗れなくてどうも体がシャンとしません。寝不足のためでしょうか?小腹がすいたという妻の言葉に刺激され、私もミニクリームパンを食べます。
ここから先の登山道に目をやると、これまでにない最も急な登りが待っていて、ここが「一口水」と言われる理由が納得できます。
一口水から王滝頂上までの急斜面では鼓動が激しくなり何度も深呼吸をしますが、心臓の高鳴りは止みません。ちっとも酸素が入ってこないような感じです。空気が薄いのでしょうか?
徐々に先行のメンバーに距離を開けられますが自分のペースを守ります。重い体に鞭打って瀕死の状態で王滝頂上に到着しました。この登りはかなり体に応えました。王滝頂上には、御嶽山奥社宮と社務所、山荘が建っていて、トイレも設置されています。
ここで少し長めの休憩となり各自がそれぞれの用を始めます。妻は社務所で娘と息子と息子の彼女のお守りを、私は山荘で山バッジをそれぞれ買います。剣ケ峰が僅かの距離に見えます。社務所の前でドカッと座り込みます。
少しでも元気を取り戻そうとミニクリームパンを食べます。妻が「ちょっと眠い」と言うとガイドさんが「軽い高山病かも」と教えてくれました。高山病は、眠くなったり頭痛がしたり、吐き気がしたりするそうです。妻の心配が現実になってしまいましたが、未だリタイアはしないようです。
いよいよ剣ケ峰目指して出発します。風の通り道になっているという八丁ダルミへ僅かに下り、細かくなった火山礫のガレ場を登ります。
妻はいつものような元気はなく、ペースもかなり落ちています。いつもは使おうとしないストックを妻に差し出すと素直に受け取りました。
妻はとうとう最後尾になってしまったので、最後尾を歩く添乗員さんに「お先に」と言うと「気にしないで」と言葉が返ってきました。これも添乗員さんの仕事のうちなのですね。ゆっくりゆっくり登ります。
剣ケ峰旭館の前を通過し、最後の階段を一気に登ると剣ケ峰の頂上に到着です。
頂上は360度が見渡せますが、生憎の雲のため乗鞍岳と穂高連峰が望めるだけでした。
妻の大好きな富士山も残念ながら見えません。見下ろすと二色に分かれた二の池や旧火口の万年雪も見えます。山頂には立派な奥宮の社務所が立っていて信仰の厚さを感じます。
社務所の裏手に廻るとお鉢めぐりのコースの道標があり、西方に目を転じると白や茶色の地肌の噴火口らしいところが見えました。覗いてみようと登山道を少し外れて火山灰土のぬかるみに足を踏み入れてみましたがよく見えませんでした。
山頂に永く留まるだけの時間に余裕は無く下山にかかります。集合場所の階段下の山荘前に下りると山バッジが目に入りました。御嶽頂上山荘と剣ケ峰旭館のそれぞれのオリジナルバッジを1種類ずつ買ったと言うと妻が呆れていました。
班ごとに出発の点呼をしているときに、ガイドさんからツアーメンバーで高山病のため途中で引き返した方が1人居たとの報告がありました。山頂に着いた方の中にも気分が悪く先に下山をした方も居るようでした。少し混乱した点呼の後に下山開始となりました。
登ってきた道を下るにつれて、御嶽教の信者さん達が「六根清浄、御山は快晴、護らせたまえ、ざんげざんげ」と唱えながら集団で登ってくるのに何度も行き交いました。その度に私達一般登山者は、道を空けて通り過ぎるのを見送ります。裸足で登られてる方に「痛くないですか?」と訊ねると「痛いですよ」と笑顔で答えが返ってきました。信仰の強さを感じる時でした。
御嶽山特有の雰囲気を十分に味わうことができた山旅でした。
剣が峰旭館で買ったバッジ
イワオトギリ
イワカガミ