苗 場 山

2,145m  新潟県・長野県

2007年8月12日(日)  晴れ
【メンバー】 単独

小赤沢駐車場(7:20)→(7:48)四合目水場(7:55)→(8:17)五合目(8:20)→(8:54)六合目(9:05)→(9:21)七合目(9:25)→(9:48)八合目(9:55)→(10:04)広場(10:10)→(10:14)和山分岐→(10:18)九合目 →(10:54)苗場山山頂看板(12:05)→ 七合目休憩10分 → 四合目休憩10分 →(14:30)小赤沢駐車場

【歩行時間 5時間1分】

津南町歴史民俗資料館付近から苗場山方面を望む 苗場山は左側3つのピークの奥にあり見えません


予定通り5時に定宿(湯沢健康ランド)を出て、車で苗場山の小赤沢の登山口に向かいます。国道17号線沿いのセブンイレブンで食物を買い込み国道353号線に入ります。この国道は私が免許取立ての頃に、自宅~京都~福井~十日町という長距離を走った時のルートの一部で、当時は道幅も狭く観光バスとすれ違えずに二進も三進もいかなくなってしまった苦い思い出のある道路です。
あれから随分と時間が経過して今ではすっかり道路も整備され、快適に走れる道となっていました。

朝早いためか、前方には1台も走る車はありません。国道117号線から国道405号線のカーブの多い道を進み小赤沢集落に着きます。ここから林道に入り、1合目の大瀬ノ滝の水を汲んで、曲がりくねった道を20分ほど走ると三合目のとても広い駐車場に着きます。既に15台ほどの車が駐車しています。テントも2張りほどあります。トイレも完備しているので宿泊も可能なようです。次々と車が到着してきます。今日は快晴の日曜日で、さらにお盆休みの真最中なので、登山者も多いのだと思います。
昨日のうちに今日の準備をしておけばよかったのですが、昨日の武尊山登山でエネルギーを使い果たし、何もする元気がなく、今やっている有様です。

今日も暑そうですが、昨日の教訓から長ズボンに履き替えます。昨日と違い時間的に十分余裕があるので、サンドイッチの朝食を済ませ7時20分に登山口に向かいました。駐車場の奥が登山口になっています。ここにも「熊に自分の存在を知らせてください」と書かれた看板が立っています。熊鈴は昨日の武尊山下山中に壊れてしまったので、口笛でも吹きながら歩くことにします。高が熊鈴一つで心の安らぎになることを知らされます。

登山道は、緩やかな登りですが、昨日のダメージが残っているのか足が重くて堪りません。歩き始めて30分ほどで水場に着きます。ご夫婦が朝食の準備をされています。ご夫人から「小屋泊まり?」と聞かれ「日帰りです」と答えると「健脚ね」と言われましたが、泊まる人が多いのでしょうか?私もお金と時間の余裕があれば、山小屋泊まりの優雅登山をしたいところなのですが…。水を一口飲んでザックを背負っていると、中学生くらいの子と一緒の男性が通過していきました。

その子が恥ずかしそうに小さな声で「こんにちは」と言うので私は元気よく「こんにちは」と返します。彼は、はにかんだ笑顔で振り向きながら過ぎていきました。この頃に山を好きになってくれると一生続けてくれるような気がして、連れているお父さんに心でエールを送ります。
この親子とはその後6合目まで、抜きつ抜かれつ歩くことになります。水場を出てから登山道は大きく根を張った大木を迂回する箇所があります。幹のトンネルを潜る箇所もあります。

樹木の存在が優先で人は迂回して歩くという自然との共生を感じられる道作りに感心します。(登山道を作るために多くの樹木を伐採した地域とは大違いです)苗場山は山頂に湿原があるくらいなので保湿力が高いため、ところにより泥濘がありますが、そんな所は直径40cmくらいの丸太を小口切りにして踏み石のように敷き詰めています。5合目を過ぎると次第に傾斜も増し、岩混じりの道になります。

6合目で休んでいると5合目手前で抜いた例の親子が追い着き、その中学生は「こんにちは!」と今度は笑顔で元気良く追い抜いていきました。これ以後この親子とは会うことはありませんでした。少し長めに10分の休憩をして7合目まで40分を目安に登り始めます。6合目で気付いたのですが、1合目毎に立てられた標識には、そこの標高とともに次の合目までの所要時間が記されていたのです。次からは、これを目安に休憩をすることにします。

6合目から7合目までは、トラバース気味の岩混じりの道になりますが、歩きにくいということはありません。7合目に着くと4人組の男女が道を塞ぐように座って休んでいました。何にしても暑くてたまりません。風が殆ど吹いていませんでしたが、ここは僅かに涼しく感じられます。座れるほどのスペースも無いので立ったまま水分補給だけします。休んでいる間にその4人組みは下っていき、代わりに二人組みの男女が着いて、スペースが狭いため休むかどうするかと相談しています。私はザックを背負い「お先に」と言って出発します。

ガイドブックには7合目から8合目までの間には鎖場が数箇所あり難所の表示があります。確かに岩場が数箇所ありましたが鎖を使わなければならないような所は無く、体力的には問題がありましたが安全に通過することができました。8合目を過ぎると視界が開けてきて涼風が熱くなった体を冷してくれます。風を受けながら登っていると体の底から元気が湧いてくるようです。ガレ場を登りきると山頂の一角の湿原の原に飛び出します。これまでの苦労が報われる瞬間です。木道が敷かれ山頂に向かって延びています。

南西から北方にかけての山々が望めますが、山名はちっとも分かりません。西側にピラミダルな三角錐の特徴ある山はなんと言う山でしょうか?降ろしたザックから一眼レフを取り出し周辺に見える山々をカメラに収めます。この快晴の空の下で、涼風を受けながら緑の絨毯と遠くの山々をぼんやり眺めていたい気持ちを抑え、山頂を目指して歩き始めます。池塘が点在する湿原の中の緩やかな勾配の木道を気持ちよく歩きます。

ピラミダルな鳥甲山

湿原には、既に季節が終わって花の姿は少ないですが、チングルマの綿毛のなりかけや黄色のミヤマキンバイを見ることができます。和山温泉への分岐を右に分けて9合目の標識を過ぎ、樹林の中にある大きめな岩の上をテンポ良く過ぎれば再び湿原に出ます。山頂に向かって木道が遥かに伸びていて、未だもう少し登らなければなりません。

風は涼しくて気持ちが良いのですが、変化の無い風景を見ながら延々と歩くことに飽き始めていました。と言うより、山頂付近にはお花が咲いていると期待して来ただけに、ガッカリして気力が無くなってしまっていたのです。山頂の近くにワタスゲの群落がありましたが、あまり感動しませんでした。来る時期が遅すぎたことを反省しました。気を取り直して山頂へ向かいます。

和山温泉への分岐/p>

苗場山頂ヒュッテの下に立つ記念碑の前を通り木道を進みます。少し行くと倒れた「苗場山」と書かれた小さな標柱と立て看板がある木道の広場に着きます。一人の登山者が食事をしています。ここが山頂??確かにここだけ広場が作ってあるので間違いないと思うのですが、下山してくるご夫婦とすれ違った時に「山頂は少し下ったところにあったよね」という会話が聞こえていたので、俄かに信じがたく、もう少し先まで行ってみることにします。

しかしながら少し歩いてみましたが山頂らしい表示も無いので引き返して先ほどの広場で食事をすることにします。すると何組かの登山者も集まってきて食事を始めます。やはりここで正しかったのだと安堵しておむすびとパンの食事をしていると、登山ツアーのような集団が口々に「山頂は遊仙閣の裏だよね」と言って目の前を通過して行きます。あっ!その時、地図の三角点は遊仙閣の横に記載されていたことを思い出しました。

分からないときは、地図を調べるか人に聞くべきです。「聞くは一時の恥、聞かずは一生の恥」私の悪い癖が出ました。食事を済ませてから遊仙閣へ向かいます。遊仙閣の裏には、樹林に囲まれて大きな標柱が1本立ち、すぐ横には三角点石標がありました。これだ、これだと石標にタッチして登頂したことを自ら確認します。

遊仙閣の売店で山バッジを買い冷えたCCレモンをガブ飲みした後、標柱を見ながら店先のベンチで暫くぼんやりしていました。何人かの登山者が標柱に近づき記念撮影をして直ぐに立ち去ります。これほど登山者に持てない山頂は他に無いかもしれません。どのくらい時が経ったか、体に活力が甦ってきたことを感じ下山することにします。

苗場山頂ヒュッテを見学して、その下の記念碑がある分岐を小赤沢に向け歩き始めると、今朝、水場でお会いしたご夫婦が丁度到着するところでした。ご夫人から「速いわね。もう帰るの?健脚ねえ。さよなら」と声を掛けられ「お元気で!」とお返しします。たった数分話しただけでも再会すると親しく話せるのが山仲間の良さかもしれません。単独登山が多い私ですが、人との触れ合いはとても嬉しいことです。 今朝会った中学生連れの親子とは山頂でも再会することは叶いませんでした。これも一つの思い出と感慨に浸りながら往路を下山しました。

タケシマランの実

オトギリソウ

ワタスゲの実