岩 手 山

2,083m  岩手県

2008年9月6日(日)  晴れ
【メンバー】 妻 + 私

馬返し駐車場(6:48)→(6:52)登山口 →(7:27)0.5合目分岐 →(7:41)一合目(7:46)→(8:02)二合目 →(8:10)二.五合目 →(8:26)三合目 →(8:48)四合目(8:53)→(9:22)五合目(9:37)→(10:10)六合目(10:15)→(10:50)七合目(11:20)→(11:26)八合目避難小屋(11:33)→(11:55)不動平 →(12:15)肩 →(12:40)薬師岳山頂(13:00)→(13:29)不動平 →(13:41)八合目避難小屋(14:00)→(14:52)駒鳥清水(15:03)→(16:14)登山口(16:19)→(16:22)馬返し駐車場

【歩行時間 7時間36分】

八幡平駐車場から


岩手山はJR盛岡駅の北西に位置し、独立峰のように見えますが奥羽山脈に属している岩手県の最高峰です。1919年に小噴火(水蒸気爆発)して以来、1998~2003年まで火山性地震や地殻変動が見られたため、入山規制が行われてきましたが、2004年7月1日に全山入山規制解除となりました。
しかし、現在でも火山活動が見られることから、登山に関しては自己責任が求められています。

夜明けに宿の窓から

朝から細かい雨が降ったり止んだりの天気ですが、予定通り岩手山の登山を決行することにします。悪天候の中では岩場が連続する「網張コース」は危険があることと、距離を歩いた挙句にリフトが止まった場合は悲劇になるので、一般的で安全な「柳沢コース」を選びました。
登山口の「馬返し」までは、宿から車で30分くらいと聞いたのですが、この時間で着くにはかなりのハイスピードで走らなければなりませんでした。

馬返しの広い駐車場には、既に10数台の乗用車が停車しています。こんな雨模様なのに物好きな人が何と多いことでしょう。
霧のような雨が降り注ぐ中を「登山口」の標識に従って登り始めます。

トイレの建物の前を過ぎ、ロッジが建つキャンプ場の中を歩くと、勢い良く湧き出す水場があります。水場の前には東屋が建ち、キャンプ場利用者の駐車用のスペースもあります。ここまで乗り入れることができたみたいです。(ちなみにこのキャンプ場の使用料は無料です)

ここから下り気味のブナやミズナラの林を歩きます。帰りには登り返しになるので嫌だなと思いましたが、大した距離ではなくてホッとします。ガイドブックによると1合目までが長くて約1時間かかるようです。
時折、木々の枝葉から雨の雫が落ちてきます。木々が天然の傘になって、私たちを雨から守ってくれています。樹林帯を歩くのは眺望も無く風も通りにくいので好きではないのですが、こういう天候の時にはありがたいです。登山道は良く整備されていて歩きやすいです。

0.5合目で旧道と新道に別れますが、雨を避けるために樹林の中を歩く新道を選択します。1時間弱で1合目に着きます。
休んでいた中年男性2人のうち、山慣れた感じの方が天を仰ぎながら「今日は1日止まないな」と言いながら出発していきました。

私はそれでも雨は上がってくれると信じ続けることにします。5分ほど休憩して再び歩き始めます。
1ヶ月以上運動らしい運動をしていなかったためか足取りが重く先が思いやられます。

後方から話し声が近づいてきます。数人のパーティが元気良く階段を登ってきます。私たちよりは一回り若そうな7人パーティに道を譲ります。彼らとはその後、抜いたり抜かれたりでしたが、2.5合目から眺望の良い新道の方へ行ってしまいました。

霧雨に巻かれながらひたすら樹林の中を登ります。 後方を登っていた妻が「太陽!」と言うので空を見上げると、いつの間にか雨が上がり、薄日が差してきました。晴れ男、晴れ女の面目躍如です。

旧道の稜線に7人パーティの姿が


周りの木々の背が低くなり、太陽が後頭部を照らすようになると、今度は暑さとの戦いが始まります。
私は、寒さには負けない自信がありますが、暑さには滅法弱いのです。

登山道の傾斜も厳しくなり、5合目を過ぎる頃には、何だか登るのが嫌になってきました。いつもなら妻が駄々をこねる頃ですが、今日に限っては平然と登っています。今日は私が駄々っ子になります。少し歩いては水をがぶ飲みするので、大量の汗をかきます。

ブツブツ独り言を言いながら何とか旧道との合流点である7合目の広場に着きました。旧道を歩いていた7人パーティも休んでいました。ここは涼風が駆け抜けます。もう歩く気力が湧かないので昼食を摂ることにします。

宿で用意してくれた「おむすび2個入りのお弁当」を食べます。全部食べては多すぎるので半分は残します。食べ終わるとお腹の底から力が湧きあがってくるのを感じます。エネルギー不足だったみたいです。

休んでいる間に少しずつ雲が晴れてきて岩手山の全容が見えました。その山容は浅間山にとてもよく似ています。未だかなり登らなければならないようです。妻は見えない方が良かったと言います。暫く休んでから、再び山頂を目指します。

ハイマツを抜けると直ぐに岩手山八合目避難小屋に着きます。小屋の前庭にはベンチがあり沢山のハイカーが休んでいます。綺麗なトイレや水場もあって、ここで昼食にすればよかったと残念がります。でもこの少しが歩けなかったのです。

未だ山頂を踏んでいませんが、忘れないうちに山バッジを買いました。山荘名物のクエン酸たっぷりの山ぶどうのジュースでリフレッシュし、水も補給して山頂へ向かいます。

不動平までは岩が転がる平坦な道を歩きます。ウスユキソウやチチコグサが目立ちます。左手には鬼ケ城の稜線が見えてきました。

今まで樹林の中の閉鎖的な道を歩いてきたので、開けた道は気分も爽快になります。不動平にも避難小屋が建っています。不動平からは砂礫の道をジグザグに登って行きます。

数年前のガイドブックには三歩進んで二歩下がるという表現がされていましたが、かなり踏まれていてそれほどのことではありません。食事と山ぶどうのジュースのお陰で、さほど苦労も無くお鉢の縁に登りつきました。

富士山頂のお釜よりは小さいと思いますが、かなり大きな噴火口です。登りついたところの反対側のピークが山頂の薬師岳です。もうひと頑張りです。
最高地点の薬師岳にはガスがかかっていますが、時々切れてその山頂に居る登山者の姿が確認できます。薬師岳まで等間隔に祀られた石像があるお釜の縁を登って間もなく山頂に着きます。

山頂には山名標柱と小さな祠が建っています。その山名標柱のすぐ横に中年のご夫妻が腰掛けていましたが、皆さん何も言わずに記念撮影をしています。自分達が邪魔だと気がつかないのには困ったものです。山頂周囲は遮るものが何もなく、晴れていれば360度の展望が迎えてくれたことでしょう。 時折、雲の切れ間から下界が顔を見せます。お鉢めぐりは眺望が無いことと、お鉢の行程を目で追ってみても魅力がなさそうなので止めることにします。

コマクサの生き残り

登山者に大人気だった山頂のセミ

ヤマハハコ

山頂に居る若者グループの楽しそうな会話を聞くと、自分の息子も彼らのように仲間と山登りでもすれば良いのにな~などと思いながら、ぼんやりと涼しい風に吹かれて休みます。
山頂からの展望を楽しみに天候の回復を期待していましたが、それは叶わぬ夢となりそうなので仕方なく往路を下山することにします。

ザレ場やガレ場の下りはスリップしないように注意して足を運びます。登ってきたときには見えていた鬼ヶ城も霧に巻かれてしまいました。
不動平の十字路を左折して岩手山八合目避難小屋に戻ってきました。
20数人の登山者が寛いでいます。私たちも山頂を制覇したという満足感に浸りながらベンチで休むことにします。

私は残りのお弁当を食べ、妻は小屋で販売しているセルフサービスの百円のインスタントコーヒーを飲みます。汗を流した後でも暖かい飲み物はとても美味しいものです。60代くらいの男女4人のパーティが2時間後に下山口の馬返しまで迎えに来てくれるようにタクシーを頼んで出発して行きました。そんなに早く着けるのでしょうか?空になったペットボトルに冷たい水を詰め、綺麗な水洗トイレを見学して私たちも出発します。

登りでクタクタになってたどり着いた7合目から、旧道(通常は登りに使われるルート)のガレ場を下ってみることにします。
樹林帯の中は日が暮れてくると早く暗くなることと、涼しい風に吹かれながら下りたいことから急遽選択したのですが、これは間違いであったことを後で思い知らされます。
先行する例の4人パーティが数10メートル先を下るのが見えます。

旧道は岩の手前を右に下ります

妻はあまりガレ場が得意ではありませが、下りのスペシャリストなので私は気合を入れて付いていきます。しかし先行する4人パーティはみるみる下っていき、姿がみえなくなりました。山慣れした方々だったようでお見逸れいたしました。あのペースなら2時間で下山してしまうでしょう。
旧道を七合目から40分ほど下った駒鳥清水の水場で、休憩している例の4人パーティに追いつきました。彼らを追い抜いてもどこかで道を譲ることになるので、下山開始直後から気に掛かっていた足の痛みを治療したいこともあり、ここで私たちも予定外の休憩とします。

ウスユキソウ

ウメバチソウ

アキノキリンソウ

足の指を保護するために履いていたトーガードが擦れて足指の皮を剥いてしまったようです。余計な保護をしてしまいました。私は良くあるんですこういう失敗が…。
靴下1枚だけにして靴紐をきつめに締めてみると、今までの痛みは無くなりました。 その間に4人パーティは出発していました。 時間をロスしたので直ぐに出発します。
早くガレ場が終わらないかと思いながら下り続けましたがいよいよ嫌になり、3合目で新道に戻ることにします。新道は歩きやすく妻はいつものペースに戻りました。雨が上がったせいか登りに歩いたときのイメージより明るく感じ、あえて旧道を下る必要は無かったと後悔します。

ハイスピードで数人の下山者を追い抜き、下山口の馬返しには八合目避難小屋から約2時間で着きました。下山口では例の4人パーティがタクシーにザックを積み込んでいるところでした。
水場で汗まみれの顔と汚れた登山靴を洗い、駐車場へ向かいます。
今回の山行では珍しく私の方が登るのが嫌になるのが早く、妻は駄々をこねることはありませんでした。
僅か1ヶ月強の間、山から遠ざかっていただけなのに、これほどまでに体力、気力が落ちるとは思いませんでした。 年を重ねる毎に一層この傾向が強くなることを覚悟しなければならないのでしょうか…。