八甲田山
1,548m 青森県
八甲田ロープウェイ(10:10)→(10:57)赤倉岳下(11:00)→(12:00)避難小屋(12:20)→(12:45)八甲田山長(12:50)→(13:10)避難小屋 →(13:50)上毛無題(14:02)→(15:00)酸ヶ湯温泉
【行動時間 4時10分】
宿泊先のホテル青森で朝食を済ませ、妻とともに一路「酸ヶ湯温泉」に向かいます。酸ヶ湯温泉前の駐車場に車を留めて、9時20分発青森駅行きのJR東北バスに乗り換え八甲田ロープウェー乗場まで戻ります。これはいつものように楽をしながらでも最大限に楽しめる「八甲田ロープウェー山頂駅~八甲田大岳~毛無岱~酸ヶ湯温泉」のコースを歩くのに都合が良いのです。ロープウェー山麓駅に駐車してしまうと、酸ヶ湯温泉から戻るバスの時刻を気にして歩かなければならなくなるのが嫌だからです。
酸ヶ湯温泉
私たちと同じような計画をした方々を乗せてJR東北バスは定刻通りに酸ヶ湯温泉を発車しました。途中の道路工事でバスの到着が少し遅れたためロープウェー駅に到着すると、発車時刻が迫っていることを知らせる案内の声が私たちを急かせます。
ロープウェーに乗り込む
急いでチケットを買い乗場へ向かいます。グループの数人は乗り込んできませんでした。今日の天候は曇りのち晴れの予報でしたが、ロープウェー山頂公園駅は薄い霧に包まれています。ボランティアの方々が大きなポリ袋を持ってゴミ拾いをしています。いつか私も機会を作って参加しなければと思います。
遊歩道の分かれ道を右へ行く
山頂公園駅前からは、遊歩道が二手に分かれていて右側のやや下り気味の木道を進みます。霧で見えませんが、視界の良い日には右手に毛無岱が望めるそうです。
田茂萢湿原の向こうに八甲田山
十字路の分岐では右に行っても先で合流するので直進して湿原の展望台方面を経由することにします。
田茂萢湿原展望所の辺りに差し掛かると少し霧が切れてきて赤倉岳や八甲田山が見え隠れします。
八甲田山が顔を出す
八甲田山の遠景の写真が撮れるチャンスはもう無いかもしれないと思い慌ててシャッターを押します。
湿原の木道の遊歩道が終わり、右から田茂萢岳(たもやちだけ)経由の遊歩道が合流したところが赤倉岳への登山口です。登山道は、池塘があるくらいなので土の保湿力が高く泥濘の箇所もあります。スパッツを付けていて正解でした。
歩きやすい山道です
遠くに昨日登った岩木山が見えます
赤倉岳への階段を登る
石混じりの細い坂道を登ると森林限界を超えて視界が開けます。振り返ると歩いてきた木道やロープウェー上駅が見え、その向こうに岩木山も見えます。
赤倉岳
強い風が大量の雲を北西方面からどんどん運んできます。今日もスッキリした晴れ間は望めないようです。
赤倉岳の火口壁に着く 風が強い
赤倉岳への登りの途中で一休みして水分補給をします。山登りの知識も少しずつ増えてきて、最近真面目に取り組んでいるのが水分補給です。喉の渇きを感じる前に一定時間毎に飲むことにしています。(これは立山登山の時の福原講師の教えです)
赤倉岳の稜線に登りついて分かったのですが、この山は噴火により山の反対側が大きく崩れ、全く別の姿を見せています。登山道はこの火口縁を歩くように付いています。
火口の縁を歩きます
火口内は赤く焼けています
赤倉岳の山頂標柱
振り返ると赤倉岳の崩れた傷口は、名前の由来が分かるような火山特有の赤茶けた色の断面をさらけ出しています。少し先に赤倉岳の標識が登山道脇に立っています。ここには広場も無く通過するだけのところで、これがガイドブックに赤倉岳山頂が取り上げられていない理由だと納得しました。
高田大岳が見えました
更に稜線を進むと高田大岳の均整の取れた三角錐の全貌が見えてきます。
子供が砂場で作る山のように地表に凸凹がありません。
右手にある火口の対岸のピークが山頂となっている井戸岳へは立ち入りが禁止されています。山頂付近の火口縁は凸凹で危険そうです。
井戸岳を過ぎるころから西風が強くなり、右前方にずっと一緒だった八甲田山が雲で隠れるようになりました。
井戸岳の縁を下ります
均整の取れた三角錐は高田大岳です
大岳避難小屋が眼下に見えます
丸太で土留めされた階段を大岳避難小屋に向かって下っていきます。
大岳避難小屋ではトイレの汲取り作業の最中でした。今朝はヘリコプターが何度も荷物を運んでいるのが見えましたがこれが理由だとわかりました。
監督風の方に伺うと日本全国の山岳をヘリで飛び回って運搬作業をしているのだそうです。
大岳避難小屋
その方によると、一昨日は悪天候、昨日は強風で作業ができずに今日まで待機していたこと、最近はバイオ処理をするハイテクのトイレが開発されて少しずつ増えてきていること、一方で早池峰地区ではハイテクトイレの導入を頑なに反対していることなど、各山のトイレ事情のお話をしてくださいました。「このような仕事もあるのだな」と思いながら、綺麗な仕事ではないかもしれませんが、自然の中で仕事ができることが少し羨ましい気持ちにもなりました。
大岳への登りで赤倉岳と井戸岳を振り返ります
お腹も空いてきたので、付近にあるベンチで昼食休みにします。6組の登山者が同じように昼食を摂っています。腰掛けたベンチの目の前にはこれから登る八甲田山が立ちはだかっています。この登りが本当に25分かと疑いたくなるような高低差を感じます。登り下りする登山者が米粒のように見えます。昼食はおむすびとサンドイッチで手軽に済ませ、いよいよ最後の登りに向かいます。
また霧が湧いてきました
避難小屋の左側の細い登山道を進みます。入り口に「危険」の文字のある標識が立っていて緊張します。低木の中を少し進むと視界が開け、ゴーロ状の登りになりますが、先ほどベンチから見上げたときの印象とは違って難しい登りではありません。ゴーロ状の階段になったジグザグの道を一歩一歩登ります。妻のペースがやや遅くなってきました。腰の痛みが出てきたのでしょうか?
八甲田大岳山頂に着きました
それでも山頂にはガイドブックの標準時間の30分より早く25分で登り着きました。山頂は草も生えていない土だけの広い平坦地で20人以上の人がそれぞれの楽しみ方をして集っていました。かすかに岩木山が見え隠れするのが見える程度で視界はほとんどありません。昨日登った岩木山と同様に雲に阻まれ、期待していた360度の展望は得られませんでした。強風が吹きつける雲の中の山頂に長居しても仕方ないので下山することにします。
三角点の標石
大岳山頂からの高田大岳
田茂萢岳への分岐
ゴーロ状の道の下山は、気を抜くと石車に乗って転倒する恐れがあるので慎重に歩を進めます。無事に避難小屋まで下り休みもとらないで上毛無岱へ向かいます。低木帯の中の登山道を下っていくと前方の視界が開け40分ほどで田茂萢岳(ロープウェー山頂駅)方面への道を右に分けて、上毛無岱の東端に着きます。湿原保護のためにここからは木道が敷かれています。
上毛無岱
木道を少し進むと左手に沢山の登山者が休んでいるベンチが置かれたテラスがあります。
私たちも休憩することにしますが、ベンチは先着者のザックに占領されていて空いている席がありません。直ぐ横で直に床に座っている方も居るというのに。マナーがなってない人のなんと多いことか…
テラスで休憩(写真の方々は常識人です)
ここからは八甲田山・井戸岳・赤倉岳の三山が正面に見えます。振り向くと遠くの樹間から岩木山が山頂部だけ顔を出しています。少しして数人のグループが出発し、続いてマナーのあまり良くない団体さんが出発しようと立ち上がったのを見て、団体さんより先に出ようとしましたが、時既に遅く先行されてしまいました。仕方がないので5分ほど待って出発することにします。
木々の間からうっすらと岩木山
岩木山が行く手に
上毛無岱から下毛無岱へ下る木製階段
木道を暫く進むと先行の団体さんに追い着いてしまいましたが、湿原のところでリーダーの解説を聞くために立ち止まっていたため、追い抜くことができました。少し先にガイドブックにあった急で長い木製階段に差し掛かります。下毛無岱までの高低差約50mを一気にこの階段で下っていきます。これだけ長い木製階段は初めての体験でした。
紅葉が始まった
下毛無岱も木道が整備されています。紅葉には少し早いですが、所々で赤や黄色に色付いた葉が見られます。湿原の木道を歩いていると今年の夏に行った尾瀬や苗場山を思い出します。
ここの湿原も素晴らしい草もみじと灌木の紅葉を見せてくれそうです。湿原を過ぎると樹林帯に入り眺望はなくなります。黙々と酸ヶ湯温泉へ歩を進めます。このシーズンは花もなく樹林帯の中を歩くのは退屈になります。
城ケ倉温泉への分岐
城ヶ倉温泉への分岐を過ぎ、一人の青年が二人の若い女性に何やら指差して説明している横を通り過ぎていきます。ナナカマドのように赤い実を付けた低木を多く見かけますが名前が分かりませんでした。その赤い実を採ってティッシュに包んでいた男性が居たので訊ねたところ「ガマズミ」だと教えてくださいました。また、そこここの木の根元にはきのこが生えていて、着実に秋が近づいていることを感じさせてくれます。
終着の酸ヶ湯温泉が見えた
さすがにボーイスカウトで培った植物の知識を持つ妻もきのこの種類は見分けがつかないようです。酸ヶ湯温泉の全景が見え、最後の急な下りに差し掛かかり道が二手に分かれていて迷っていると後方から先ほどの青年に「右の方が良いですよ」と声を掛けられました。礼を言って先に下っていきます。後で振り向いてみると左へ行っていたら立ち往生は必至でした。その青年によるとここから下山口までの間がコース中で一番の悪路なのだそうです。
酸ヶ湯温泉に到着
靴を汚しながら酸ヶ湯温泉の登山口に無事到着しました。チョロチョロと流れる水溜まりで靴の泥を取っていると、またまた先ほどの青年から駐車場の脇に水場があって、靴洗い用のブラシも置いてあることを教えていただきました。名前も聞きませんでしたが、下山した時に出会った地元風の人々と声を交わしていたところを見ると、地元では知られた方のようでした。同行していた女性から今日で三日目の登山だと聞き、同じようなことをしている同類に親しみを感じました。
城ケ倉大橋の前で
酸ヶ湯温泉に浸かることも考えてはいましたが、城ヶ倉大橋を見学してから十和田湖まで行くには時間がタイトなので入浴を諦め、おでんを食べるだけにして城ヶ倉大橋に向け車を走らせました。勿論、山バッジは忘れずに買いました。上路式アーチ橋では日本一の長さの城ヶ倉大橋の中央部から谷を覗くと足が竦みます。ここも紅葉の時には混雑することでしょう。今日の行動計画を全て終え、宿舎ホテル十和田荘へ向かいました。