天 上 山
574m 東京都神津島村
黒島登山口(13:19)→(14:13)黒島山頂10合目 →(14:25)千代池 →(15:02)裏砂漠 →(15:19)裏砂漠展望地 →(15:59)新東京百景展望地 →(16:06)不動池 →(16:29)天上山最高地点 →(16:43)不入ガ沢 →(16:45)白島下山口 →(17:05)公設トイレ →(17:35)白島登山口
【行動時間 4時間16分】
洋上からの神津島(沢尻湾沖合い) 中央のピークが最高点
セブンアイランド神津島は、東京から南に約180km、東京都に属する伊豆七島のほぼ真ん中に位置する島です。神津島は、高校生の同窓生と訪れて以来、会社に勤めてからも夏になると同島出身の同僚「賢ちゃん」のご実家に「神津島グループ」と称して数人のメンバーで押しかけ、青春を謳歌した思い出の地でもあります。
その神津島を形成する山の一つ「天上山」は、故田中澄江氏の「花の百名山」やカリスマ登山家・岩崎元郎氏「ぼくの新日本百名山」の著書に選ばれているメジャーな山です。
東海汽船のジェットフォイル「夢」号
その天上山へ元神津島グループメンバーと会社の同僚たちと登りに行きました。当初、春の花を見るために5月に訪問するつもりでしたが、乗船券が取れず6月に入ってしまいました。今年は例年より早く梅雨入りしてしまい天候が心配ですが、日頃の心掛けが良いので雨に降られることはないでしょう。 今回の登山では、石橋正行氏執筆「神津島花図鑑」の花分解図写真や植物図の作成を担当した現地住民の賢ちゃんご夫妻がガイドしてくださるので大船に乗った気分でいます。
神津島へ向う船中からのコバルトブルーの海(新島沖)
神津島港からの天上山
東京竹芝組と久里浜組それぞれに東海汽船ジェットフォイルに乗り込みます。
久里浜港から神津島港までは大島や利島などに寄港するため、約3時間の船旅です。ジェットフォイルの乗り心地はとても快適で船酔いの心配は少ないと思います。
神津港まで賢ちゃんご夫妻が迎えに来てくださり、車で黒島登山口まで登ってしまいます。
今回の登山メンバー(登山口で)
黒島登山口は標高約200mなので、黒島山頂10合目480m)まで280m約1時間弱の登りです。
登山が好きでないbasemanさんも今回はお付き合いで登ります。登山口には金剛杖が用意されていて、無料で使うことができます。
こんなところにも島の人々の優しさを窺い知ることができます。
いよいよ登山開始です。
階段状の穏やかな道です。よく整備されています。
1合目(211m)の標柱です。10合目まで続きます。
登山口からは、電光型に付けられた階段状の登りが続きます。低木が多いため日影は無く、夏場は日差しが厳しいかもしれませんが、海からの涼風があるので多少助かるかもしれません。
登山口から「何合目」毎に標柱が立っているので目安になります。
今日は曇りがちで霧が多く、眼下に前浜の海岸は望めますが、遠方の眺望は望めません。
梅雨だから仕方がないですね。
登山道から前浜方面を見下ろします。
心地よい海風が流れます。
斜面に咲くオオシマツツジ
もうすぐ黒島山頂です
ウツギ
オオシマツツジ
サルトリイバラ
シャリンバイ
ヒノキバヤドリギ
モウセンゴケの蕾
ヒメユズリハ(雄花)
コゴメウツギ
オオシマツツジ
黒島10合目山頂の標柱です
休み休みしながらも黒島山頂10合目(480m)には予想よりも早く登り着きました。
ここは広い山頂の一角で、最高点(572m)までは未だ暫く歩かなければなりません。
海から吹き上がる風が汗を冷やし、永居をすると体が冷えてきます。
オロシャの石塁
少し歩くと江戸時代に黒船の来襲があってから慌てて築いたという「オロシャの石塁」があります。
これは異国人が上陸したとき、この山に引き寄せて上から岩を落として防御するための石積で、その跡が現在も山頂付近に残っているのです。
千代池を見下ろす
ここから千代池(せんだいいけ)まで少し下ります。
千代池は火口跡に水が溜まってできた池で天上山では最大のもので、夏場には涸れることもあるようです。
コケがかなり繁殖してきていますが、コケの下に生えている希少な草があるそうですが、国立公園内のためにコケの除去ができないと賢ちゃんが嘆いていました。ここには「トキソウ」が咲いていました。
トキソウ
千代池で少し休憩してから裏砂漠へ向います。
薄暗い潅木の間をあるくと副長が何かを撮影しています。
ヒメトケンランです。この花は小さいうえに薄暗い林の中で常に揺れているため、撮影には苦労します。
私も何十枚も撮影しましたが、何とか見られるのはこの一枚だけでした。
ヒメトケンランを撮影しています
ヒメトケンラン
少しの潅木帯を抜けると先導する賢ちゃんに痛めつけられた15cmほどの「ムカデ」がもがいていましたので、私が止めを刺しました。
緩やかな坂を登りきると裏砂漠が見えてきます。
表砂漠への分岐です
植物が少なくなってきました
裏砂漠の中を歩きます
裏砂漠は、流紋岩が細かく砕けて砂になって堆積していて、まるで砂漠のような景観です。
天上山の最高点が霞んで見えます
この砂漠に降った雨は、周囲の丘陵に阻まれて流れ出すことなく全て浸透し、これが各所に湧き出して、神津島民の貴重な水源となっているのですね。
砂漠を横断していくと前方にこんもりとしたツツジのドームがいくつも現れます。風で飛んできたツツジの種が根を張り、そこに堆積した砂や他の野草の隙間から再びツツジが芽を出そうと伸びる、そんな繰り返しによって出来た日本で神津島だけにしか見られない自然現象です。素晴らしい自然の力です。
裏砂漠展望地を見下ろします
この先を少し下ると裏砂漠展望地に着き、テーブルもあるので小休止します。
この展望地からは眼下に祇苗島(ただなえじま・別名:蛇島)が望め、見通しの良いときは三宅島や御蔵島が望めるところです。
賢ちゃんの奥様が、地元の美味しい調理パンをご馳走してくださいました。小腹が空いていたので思いがけないご馳走にみんな大喜びです。
裏砂漠を後に新東京百景展望地へ向います。
途中で賢ちゃんから、葉を指して何のスミレか分かる?と聞かれましたが、僕には葉だけで判断するのはできません。
両脇にユリの葉が目立つ道を少しで、新東京百景展望地に着きますが、生憎の天候なので眺望はまったくありません。残念です。
本来であれば、大島、利島、新島、式根島、三宅島や房総半島まで見渡せることができる展望の優れたところです。新東京百景展望地を後に不動池へ向います。
新東京百景展望地からわずか5~6分で不動池に着きます。不動池には中州に龍神様が祀られています。ここもコケが大繁殖していて、水面の多くが隠れてしまっています。
天空の丘への分岐です
ここから天空の丘への分岐があるのですが、今日は眺望が望めないので登らないことにします。
この近くで賢ちゃんにスダジイの木に着生する「セッコク」という花の在り処を教えていただきました。初めて見る花です。
少しの休憩後、最高点に向います。
セッコクの花
表砂漠は右奥の砂地です
10分ほど歩くと左下に表砂漠が見えてきます。表砂漠は、緑の部分が多く見られました。このまま緑化が進んでしまうのでしょうか?
岩ゴロの道です
表砂漠の分岐を過ぎ、ゴロゴロした岩の道を登って天上山の最高点に向かいます。
天上山最高点へのT字路です
この分岐の僅か先を右に登ると天上山最高点です。妻が登らないと言うので賢ちゃんの奥様が付き合ってくださるみたいで、男性陣だけで向います。
天上山山頂 360度の眺望なのでしょうが残念!
所々にスリップ止めが付いた丸太階段を僅かに登ると山頂に着きます。360度の展望なのでしょうが、霧に包まれて何も見えません。
妻たちが待つT字路まで戻ります
霧に包まれて眺望は全くないので、記念撮影だけ済ませて下山します。
先ほどの分岐を右に白島登山口方面へ向います。
不入ガ沢の縁を下ります
今でも崩落が進んでいるような神津沢の上部を渡り、不入ガ沢(はいらないがさわ)へ進みます。
今も崩壊が続いている神津沢
この神津沢には治山事業のために機械工具も無い中で人力で積み上げた石積みがあり、当時の島民の苦闘する姿が目に浮かぶようです。
神々の協議の場「不入ガ沢」
不入ガ沢は旧火口の一つで、その縁を下山口に向って歩きます。不入ガ沢は、伊豆七島の神々が水の配分のことで協議をした神聖な場所として、現在も立ち入りが禁止されています。
白島下山口を下ります
直ぐに白島登山口への分岐があり、左へ下っていきます。この登山道がついた斜面は崩れやすい地質のようで、登山道の縁には土嚢が積まれています。
歩き易く整備された丸太階段を下ります
丸太で土留した階段には、その段差が少なくなるように平たい石が置かれ、登山者の膝への負担を軽減してくれていて優しさを感じます。
公衆トイレ 山中のトイレは有難いです
白島下山口から20分ほどでトイレのある林道終点に着きます。ここには沢山の金剛杖が置かれていましたが、この場ではなく白島登山口まで持っていって欲しいそうです。(後に島民が登山口まで運搬しているようです)予定時刻をオーバーしていることもあり、トイレタイムだけとって直ぐに出発です。
鳥居を潜ると終点は間近です
ここからは潅木帯の中の穏やかな下りが続き、最後に少し段差のある滑りやすい石階段を下れば、白島登山口に着きます。林道終点から25分でした。
白島登山口 ゴールです
白島登山口で記念撮影の後、民宿長谷川さんが回してくれた車に便乗して、温泉センターに向いました。
皆さんお疲れ様でした。
賢ちゃんご夫妻、素晴らしいガイドをありがとうございました。いつの日かまた、ゆっくりと花の観察に訪れたいと思います。
多幸湾を高台から見下ろす
帰りに乗船する赤いジェットフォイルが見えます
多幸湾の白砂の海岸線