三峰山 鐘ケ嶽

934.6m 561.1m  神奈川県

2011年4月24日(日)  晴れ
【メンバー】 単独

煤ケ谷バス停(8:25)→(9:26)物見峠分岐 →(9:38)祠(9:43)→(10:46)三峰山北峰 →(11:08)三峰山南峰(11:18)→(12:23)不動尻 →(12:44)山神隧道手前 →(12:52)見晴広場分岐 →(13:10)鐘ケ嶽(13:15)→ 見晴広場分岐 → 鐘ケ嶽登山口(山神隧道口)→ 広沢寺温泉 →(14:20)七沢病院入口バス停(14:22)

【歩行時間 4時間12分】

ヤビツ峠付近から三峰山


今年の2月に会社の山仲間と登った大山の下山中に立ち寄った見晴台から三峰山を眺めたとき、約14年前(1997年10月17日)の大山登山の記憶が蘇ってきました。
山登りを始めたばかりの私には、ガイドブックに書かれた「危険」「難所」という言葉は重く、いつの日か登れるようになりたいという願いを「山歩記」に書いたことを思い出したのです。この14年間に槍ヶ岳、塩見岳や甲斐駒ケ岳などの岩場も歩いてきましたが、すっかりこの山の存在は忘れていて、今ならもう大丈夫と思い、今シーズンのスミレの撮影が一段落したら一番で登りに行くと心に決めていた憧れの山でした。

三峰山は、丹沢山の派生尾根上に連なる丹沢三峰(太礼ノ頭・円山木ノ頭・本間ノ頭)と区別するために、普通は「大山三峰」と呼ばれています。仏果山などと同じ礫岩の山で、崩落している箇所も多く、ナイフリッジとなっているところも多いとのことで、少し緊張しますが、大山で会った老登山者に「注意さえすれば面白い山だ」とニコニコしながら言われたことを信じて登ることにします。

本厚木駅から宮ケ瀬行きのバスを「煤ケ谷」で降車します。7~8人の登山者が降りましたが、彼らは一目散に登山口を目指して歩き始めます。

私は記録写真のためにバス停前を行ったり来たり。こんなことをしながら登るので、どうしても余分な時間が掛かってしまいます。

バス停から谷太郎川沿いの車道を歩き二俣に分かれた道を右斜めに登り、正住禅寺の参道入口前を通過します。

僅かで登山届けのポストがあります。傍らの花壇の手入れをされている村民の奥様方と挨拶を交わし、天気も良く、爽やかな風を受けながら里の山道をのんびりと登り始めます。

芽吹き始めた新芽の黄緑が山々に広がってとても綺麗です。足元に目を向けるとカキドオシやカントウタンポポが咲き誇っています。

写真を撮っていると単独行のご婦人から「何か見つけましたか?」と尋ねられました。

「カキドオシを撮ってます」と答えると「たくさん咲いてますね」と言いながら追い越して行かれました。

オオタチツボスミレも見つけました。
少し歩くと新設された鹿除けの柵をくぐります。穏やかな傾斜の植林地内の道を花を探しながら登ります。

鹿除けの柵を超えていきます。鹿の害も増えてきているようです。

岩が濡れていて滑りやすい小さな沢を渡り、少し進むと左側が開けてきます。

広葉樹の新芽の黄緑もとても綺麗です。先行していたご婦人に追いつき言葉を交わします。

今日は良い天気に恵まれ、青空と新緑の緑とヤマザクラの淡い桃色のコントラストが綺麗だと仰っていました。


このご婦人も風景や新緑、ヤマザクラなどの写真を撮りながら歩いている方で、結局、物見峠分岐まで抜きつ抜かれつで登ることになります。

ご婦人はここでお休みするようなので別れを告げて私は先を急ぎます。

物見峠分岐で尾根道に出ると、「・・・無理をしないで引き返す勇気が必要です」という有名な立て札があります。
この立て札は、三峰山頂まで何度も見かけることになります。

やや傾斜が増した尾根道を息を切らせて登っていくと祠とベンチのある小さな平らに出ます。ここで5分ほど休憩して喉を潤します。樹間からは仏果山方面が望めます。

祠の横に真っ直ぐに伸びたモミの大木があり、その横から尾根道を登って行きます。



紫色のトウゴクミツバツツジが咲き始めました


モミの大木




尾根道の斜面には紫色のトウゴクミツバツツジが咲き始めています。いよいよ咲き始めたな、丹沢山のシロヤシオはいつ頃になるかな、いつ頃会いに行こうかななどと次の楽しみに思いを馳せます。
毎年同じ場所で私たちを出迎えてくれる健気に咲く樹木や野草の花たちは古くからの友達のように思えてしまいます。

丸太階段を登りきり平になると崩落地に出ます。ここからは、丹沢山から丹沢三峰への稜線が一望に見渡せます。
右手前方の樹間から三峰山北峰らしき姿が見えてきました。

ここの尾根道は、何箇所かの崩落地を通過しますが、しっかり整備されていて危険を感じるような箇所はありません。
崩落地で立ち止まってしばらくの間、丹沢山槐を眺めていました。

※ 画像をクリックすると拡大します


更に尾根道を進むと単独行の若い男性と出会い、挨拶を交わしながらすれ違います。 この山は入山者が少ないとは聞いていましたが、先ほどのご婦人と合わせてこの男性で二人目です。

この辺りは、未だヤマザクラが咲いています。
アセビも満開です。

ヤマザクラ

アセビ


花を眺めながら歩いていると、ベンチが置かれている北峰の鞍部の広場に出ます。道標に山頂まで800mとあったのでこのまま登ってしまうことにします。

ここから北峰までは高低差約100mといわれる丸太階段の急登が続きます。所により桟橋も現れます。

息を荒げながら登っていくと、ふと目前の斜面に咲くタチツボスミレが目に留まりました。ガンバレと応援してくれているみたいです。

タチツボスミレ


登りきった北峰には標識も何も無く、ここが本当に北峰か確認のしようがありません。

三峰山北峰?

北峰から南峰への尾根道


前方に三峰山南峰と思われる姿が樹間から覗けます。
鎖の付いたガレ場を下りかけると、男性二人組が登ってきました。これで三組目です。(結局、不動尻へ下るまで、この後は誰とも遭遇しませんでした)
ここから南峰までは、鎖、木製ハシゴや桟橋が連続して現れますが、危険な箇所はほとんどありません。
三点確保ができれば問題なく登れます。
過剰ともいえるほどしっかりと整備されています。

最後の急な階段を登りきると三峰山南峰に着きます。
山頂は小広く、山名標柱とベンチが置かれています。

周囲の木々が生長して眺望はあまり良くありませんが、樹間から大山が望めます。

ここで中食と水分補給のために10分ほど休みます。
予想していたよりも危険も無く容易に山頂に立つことができました。ここに来るのに何年かかったのでしょう。
ふつふつと達成感が湧き上がってきました。

感慨に耽ってじっとしていると風を冷たく感じます。
未だ下りの尾根も残っているので自分に活を入れ不動尻に向けて出発します。

岩場やザレ場は、登りよりも下りの方がスリップして危険なので注意して歩を進めます。
岩場のトラバースや急なジグザグ道を下っていくと、倒木のために登山道がふさがれています。最近の地震で倒れてしまったのでしょうか。仕方なく山側に回りこんで倒木を乗り越えて行きます。

一枚岩の鎖場を過ぎると左側に沢が見えてきます。沢の水に手を付けてみましたが、思いのほか冷たくありませんでした。でも夏場の沢の水は冷たくてとても有難いものです。この沢は谷太郎川の上流にあたります。
不動尻まではこの沢沿いを歩く快適な道です。

ヒトリシズカ

ミヤマカタバミ


再び鎖を使って岩場を下り、歩き始めるとちょうど満開を迎え、緑の葉の先に白い歯ブラシのような花を付けたヒトリシズカの群落と出会います。更に進むと今度はミヤマカタバミの白い花が一面に咲いています。登山の終わりに山からの思わぬプレゼントに感激です。

不動尻には簡易トイレが設置されていました。 広場でお弁当を広げる三人に挨拶し、広沢寺温泉に向けて舗装された林道を歩きます。

右側の崖には、タチツボスミレやユキノシタが群生しています。

この林道沿いの崖地は、他にもムラサキケマン、キケマンなどの野草やヤマブキなどが沢山咲いていました。満足!

ユキノシタ


ムラサキケマン


キケマン


ヤマブキ


山ノ神隧道の手前に差し掛かると、小沢の袂に小さな案内板を見つけました。良く見ると「鐘ケ嶽→」とあるではないですか。確か隧道を抜けてから右に登っていくはずです。

新道が開通したのかな?時間の余裕もあるし行ってみようと、山道に入っていきます。
伐採作業をしているようで、そちらこちらに丸太が転がっています。

ややスピードを上げて登ること8分ほどで、従来の山ノ神隧道からの道と合流します。

これは時間短縮ができてラッキーでした。ここから左折して鐘ケ嶽へ30分の標識があります。

勢い良く歩き始めましたが、次第に苦しくなりペースを落とします。30分くらいは持つかと思いましたが、疲れが溜まってきたみたいです。 18分ほどで鐘ケ嶽山頂に到着です。

山頂には標識と二体の石像が立っています。
丸太ベンチに腰掛けて水をがぶ飲みします。疲れました。これで今日の登りはすべて終わりです。

5分ほど休憩の後、美人の湯として知られる広沢寺温泉「玉翠楼」へ一目散に向います。 先ほどの分岐まで戻り、山ノ神隧道へ向けて下ります。

落ち葉の積もったジグザグ道は鎖が設置されています。安全のために至れり尽くせりです。

山ノ神隧道の手前に降り立ち隧道内部を覗き込んでみます。水滴が落ちる音がして何やら不気味な感じです。

ここから再び林道歩きです。クッションの効いた土と違い、舗装路の歩行は疲れた身体に堪えます。

民家の前のヤエザクラも満開を迎えています。今日は花についている一日です。

沢に沿って歩くとマス釣り場の横を通過します。何人かのご家族が釣りを楽しんでいます。私にもこんな時期があったな~などと何年か前の出来事を回想します。

広い駐車場の前を過ぎ玉翠楼は未だかなと思いながら舗装道路を歩いて行きます。

石像の脇を通過し、道端に咲くハナノオウなどを撮影しながら進むと、右手に七沢荘が見えてきました。

ハナノオウ

イチゴ

うん?慌てて地図を広げて玉翠楼の位置を確認すると、遥かとっくに通り過ぎていました。失敗しました。わざわざ鐘ケ嶽から遠回りまでして「玉翠楼の美人の湯」でさっぱりして帰ろうと思っていたのに…

戻る気力を失い立ち寄らずに七沢病院入口バス停に向うことにしました。
後方から鐘ケ嶽に「また来いよ~美人の湯は次の時に!」と言われてるような感じがしました。